ふるさと納税の落とし穴2つ
まずはじめに
晴耕雨読です。
さて、先日の日曜日に鹿児島県の肝付町からふるさと納税の返礼品が送られて来ました。
なんと1万円で黒毛和牛の切り落とし3パックをゲットです!!
かなりトクした気分です!
早速その日の夕飯に家族といただきました。とっても美味しかったです!!
ところで、先日ふるさと納税の記事を書きましたが、
その中で、今年度の税制改正により、
①6月1日から返礼品は寄附額の3割限度となること
②また地場のものでないと認められなくなること
についてお伝えしました。
今年は、ふるさと納税をするなら、少し早めの5月末までにした方が良さそうですね。
今回の記事では、税理士の視点からふるさと納税の落とし穴2点について述べたいと思います。
ワンスストップ特例制度を使った場合の落とし穴
まず、ひとつ目はワンストップ制度を使った場合の落とし穴です。
ワンストップ特例制度は確定申告不要となるため、とても便利な制度なのですが、落とし穴があります。
理由について説明するために、まずはふるさと納税の仕組みからご説明したいと思います。
ふるさと納税の原則
ふるさと納税は、寄附金控除の一種であり、原則として、寄附をした翌年の3月15日までに、確定申告をする必要があります。
また確定申告を行う際には、寄附をした自治体が発行する寄附の証明書や受領書などを確定申告書に添付する必要があります。
次の図が原則の場合の図です。
引用元:総務省HP(筆者一部加筆)
つまり、原則の場合には2,000円を除いて
①寄附した年の所得税が控除される部分(所得税の所得控除)と
②寄附した翌年の住民税10%から控除される部分(住民税の税額控除)と、
①②で控除できなかった部分について
③寄附した年の翌年の住民税から控除される部分(住民税の税額控除)
の3つがあります。
このうち、③がふるさと納税特有の控除部分であり、住民税の20%が限度となります。
ですので、住民税を多く納税している人は、ふるさと納税を多く利用できることになります。
ワンストップ特例制度
ふるさと納税は確定申告するのが原則ですが、特例として、確定申告しなくても良いワンストップの制度があります。
ただし、この方法は次の場合にのみ適用できます。
✅ 寄付する自治体が5ヵ所以内であること
✅ 年末調整だけで確定申告が不要であること
次の図がワンストップ特例の場合の図です。
引用元:総務省HP
ワンストップ特例制度を利用した場合には、確定申告をしないため、原則の①の寄附した年の所得税から控除される部分(所得控除)がないことになります。
つまり、ワンストップ特例制度の場合には2,000円を除いて
②寄附した翌年の住民税10%から控除される部分(基礎分)と、
②で控除できなかった部分について
③寄附した年の翌年の住民税から控除される部分(特例分)
の2つのみということになります。
このことはどういうことを意味するのか、わかりますか??
もし、原則で確定申告していたら、③の上限に収まっていたのに対し、ワンストップ特例制度を使ったがゆえに、③の上限を超えてしまい、ふるさと納税のメリットを最大限受けることができなかったという可能性が考えられるのです。
ワンストップ特例制度は確定申告しなくていいというメリットもありますが、所得税の控除がないことによって、こうした落とし穴があります。
でも、このことを記載している記事はあまり見たことがないですね。
なお、こちらにも詳しくふるさと納税制度の仕組みや、どのサイトから申込んだらおトクになるのか等について書いておりますので、ご一読ください。
泉佐野市がふるさと納税の自治体として認められなかった場合の落とし穴
報道でご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、大阪府の泉佐野市については、今年度ふるさと納税の自治体として認められない可能性が出てきました。
引用元:佐賀新聞
泉佐野市以外にもふるさと納税の自治体として認められない可能性のある自治体は次のとおりです。
これらは、泉佐野市とともに、先日の報道でふるさと納税によって多額の寄附金を集めたため、総務省が特別交付税を減額することを決定した自治体です。
この中で泉佐野市だけが総務省を痛烈に批判していましたので、おそらく泉佐野市についてはほぼ間違いなく、ふるさと納税の自治体から外されるかと思います。
今、福山雅治さんの下克上がテーマのドラマが放映中ですが…
さすがにお上(おかみ)に歯向かったらまずいのではないでしょうか・・・
もし、泉佐野市がふるさと納税としての自治体から外れた場合には、泉佐野市に今年寄附した人は、ふるさと納税を受けられないということになります。
それでは、どういう取り扱いになるでしょうか???
この場合には、通常の寄附金控除と同じ取り扱いになるかと思われます。
これを図解したのが次の図です。
つまり、ふるさと納税の場合には上の青で囲った部分は、特例で住民税の20%を限度として、寄附した年の翌年の住民税から税額控除できましたが、通常の寄附金控除の場合にはその特例の部分の控除がないため、この部分の控除ができないということになります。
まとめ
今日はふるさと納税制度の落とし穴二つについて、税理士の立場からお伝えしました。
ワンストップ特例制度は大変便利な制度ですが、所得税からの控除がないため、ご説明したような落とし穴があります。
その点を理解したうえで、本来なら受けることのできたメリットを享受することができなかった・・・ということのないようにしてください。
ご心配な方は、ご面倒でもワンストップ特例制度を利用せず、原則の手続き(確定申告)をされることをおススメします。
また、泉佐野市だけでなく、先日の記事でお伝えした地方交付税が削減された自治体については今年ふるさと納税制度の対象自治体から外れる可能性が高いです。
来月の5月中にはわかるようですが、この場合には納税者側はどうすることもできませんので、通常の寄附金控除として申告することになるかと思います。
もし、対象から外れた場合には、ふるさと納税のメリットを受けることができませんので、決定された以降は、他の自治体にふるさと納税された方が良いかと思われます。
今日の記事が少しでもお役に立つようでしたら嬉しいです。
それでは!!
2019年5月9日追記
報道によれば、大阪府泉佐野市、静岡県小山町、和歌山県高野町、佐賀県みやき町の4つの自治体については、6月からふるさと納税を認めない方向で調整に入ったそうです。
引用元:日経新聞
いずれも、まだ正式決定ではないですが、ふるさと納税によって多額の寄附金を集めたため、総務省が特別交付税を減額することを決定した自治体です。
ここで一つ訂正、補足させていただきたいます。
これらの4つの自治体へのふるさと納税については5月末までは認められるようですので、次のような取り扱いとなりそうです。
①うえの4つの自治体へのふるさと納税(2019年1月から5月まで)
⇒ふるさと納税の対象
②うえの4つの自治体へのふるさと納税(2019年6月以降)
⇒ふるさと納税の対象外
この場合、6月以降にこれら4つの自治体に寄附した場合には、通常の寄附金控除の対象となると思われます。
今年1月から5月までのふるさと納税についても寄附金控除になってしまうような感じで書いてしましたが、間違いのようであり、今年1月から5月までの分は、4つの自治体であっても、ふるさと納税は認められるようです。
大変失礼しました。